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感染者の経験からHIV感染者の経験から (96/11)緒方 幹夫 最近、ゲイの感染者が増えています。多くの人が症状が出て初めて自分の感染を知るようです。HIV感染は早期に治療に取り組むことで、長い間、元気に暮らすことができます。今回、感染者自身が自分の経験を話すことで、多くの人が考えるきっかけになればと願っています。 感染を知る前を振り返って僕がHIV感染の事実を知ってから1年半たちました。感染を知る前の自分は、エイズ=外国人のゲイの病気と考えていました。また、この病気の発見時に20歳以上だった人は、すでに35歳以上になっているので、25歳の自分には関係ないと思い込んでいました。何故、コンドームで感染を防げるのか分かりませんでしたし、知ろうともしませんでした。相手を選ぶ際も、この人なら大丈夫とか、あの人は危ないと考えながら相手を選び、相手により、セックスの内容も変えていました。 ウイルスは相手を選ばない年齢とか回数に関係なく、1回のコンドームなしのSEXでも感染する時は感染します。残念ながら、ウイルスは相手を選んでくれません。最近、ビデオBOXやクルージングルームなどの発展場が増えています。遊びに行くのは個人の自由ですが、周りに惑わされず、セーファー・セックスを心がけることが大切です。感染しても仕方がないと思っている人は、考えを見直すことも大切です。僕は感染してから、生きていることの素晴しさや大切さを知りました。皆さんも、今あたりまえだと思えている、生きている事の大切さを考えてみて下さい。 陽性だと言われてから体調が悪くて近所の総合病院に行ったときに、HIV抗体検査を受けてくださいと言われ、なにげなく受けました。まさか自分が感染していると思っていなかったので、結果が出るまで、何も心配していませんでした。10日後、「検査で保留と出ましたが、だからといって必ず陽性だとは限らず、陰性の可能性もあります。明日、結果が出るのでまた来て下さい。」と言われました。家に帰ってから、自分は陽性だと思い込み、これからどのように生きればいいのかが分かりませんでした。自分が死んだ後、家族やパートナーがどうするのかと考えると涙が止まりませんでした。翌日、「結果はHIV陽性です。なにか心あたりがありますか?」と質問されましたが、すぐ後ろに次の患者がいることと、僕の顔を見ずカルテばかり見ている医師の態度に、とても答える気持ちにはなりませんでした。「エイズについて詳しく教えて下さい」と頼むと医師は「専門病院を紹介するから、そこで聞くように」と冷たく答えました。「この病院で見てもらえないのですか?」と聞くと、「専門病院へ」との答えで、紹介状を渡されました。紹介された専門病院にいくまで2日間大変悩みました。この続きは次回にお話します。HIV陽性の方でまだ病院にいけない人や悩んでいる方は、ぷれいす東京まで電話や手紙で連絡をください。 HIV感染者の経験から (97/01)緒方 幹夫 前回は1年半前の感染を知る前の自分と、陽性だと告知された時の混乱状態から専門病院に行くまでのことを書きました。今回は心の支えになってくれた人々のことを話します。多くの人が考えるきっかけになればと願っています。 医師や看護婦に励まされて紹介された専門病院の外来で緊張して待っていると、医師が声をかけてくれ、最初に告知した医師とはどこか違うと感じました。診察室に呼ばれると、個室だったし、医師が自分の話を聞いてくれるような雰囲気だったので、安心して話すことが出来ました。充分に時間をかけ、病気の経過や治療の説明してくれたので、少しだけ安心して帰ることが出来ました。その後も、医師に会う度に疑問をぶつけたり、なげやりな言葉を投げつけました。それに丁寧に答えてくれ、時には、自分の態度を医師は叱ってくれることさえありました。この人だったら信頼できると思えるようになりました。 当時は、自分が死ぬことがパートナーのためになると信じていました。僕とつきあえばつきあうほど、生きれば生きるほど相手の重荷になるのではと考えていました。看護婦に相談すると、「あなたがそこまで、大事と思っているなら、相手もあなたのことを同じように思っているはずよ!」と医師や看護婦に支えられ、気持ちを整理することが出来ました。 友達からの生きる支え大切な友人に電話で感染していることを伝えると、電話では充分に話が出来ないだろうからと友人とそのパートナーが食事に招待してくれました。3人で食事をしながら現在の自分の状態、これからの治療をエイズ治療情報誌(SHIP)を見ながら説明しました。友人のパートナーには「治らない病気かもしれないけれど10年もすれば治るかもしれない。」と言われ、友人からは「自分に出来ることは悩んだ時に聞くことしか出来ないけれど、いつでも連絡していいよ!」と言われたことで、一人で悩まなくてもいいのだと思えるようになりました。この続きは次回にお話しします。HIV陽性者の方で病院に行けないでいる人や悩んでいる人はぷれいす東京まで電話で連絡ください。 パートナーの気持ちへの答え病気のことを知ってから3週間後、彼と休日に待ち合わせ、喫茶店にて自分が感染していることを率直に伝えました。彼はすでにある程度の知識を持っていて「発症さえしなければ大丈夫。」現在かよっている病院は、「日本で最先端のエイズの治療を行っている病院だから信頼出来るよ。」と励ましてくれました。帰りに2人で書店に行き家庭医学の本を見にいきました。そして、1週間後にはパートナーが一冊のエイズに関する本を買ってきてくれました。その本に発症を遅らせる可能性がある肝臓の薬について書いてあり、二人でその薬を買いにいこうと言われました。その薬は、すでに医師から処方されていたが、この本を探して来てくれた気持ちがとてもうれしく、自分も頑張って生きていく気持ちが湧いてきました。 HIV感染者の経験から・最終回 (97/03)緒方 幹夫 前回は心の支えになってくれた人々のことを書きました。今回が最後ですので、HIV治療と予防、また現在考えている事を話します。 自分の治療経験について現在、HIV感染症の治療は、早期に治療を始めることで、元気に暮らすことが可能になってなってきています。自分の経験を言うと、抗ウイルス薬を半年前から飲み始めました。薬の副作用は全くなく、免疫を示すデータも普通の健康な人と変わらないなどの効果をあげています。また、血液中のウイルス量は測定不能まで減少しています。効果がない人もいるのが現実ですが、数年前と違い、薬の種類も増えていますので、個々に合う治療が出来るようになっているようです。 自分は感染を知ってから2年になりますが、スポーツジムやテニスやジョギングをやっていて、健康な人と変わらないくらい元気です。医学進歩がより進めば、かなり長く元気でくらすことが出来る病気になると思われます。 セーファーセックスって何?最近、ゲイの感染者が増えているように思われます。多くの人が症状が出て、初めて自分の感染を知るようです。セーファーセックスを予防のために考えている方は、どれくらいいるでしょう。僕はコンドーム=エイズの予防という考えでは、セーファーセックスをする人が増えないような気がします。コンドームをつけてアナルセックスをするのが当たりまえだと考えれば、セーファーセックスという言葉は必要でなくなる思います。今までコンドームをつけないセックスが当たり前だった人にとっては、予防が性行為の中で行われるのは難しいと思われます。皆がコンドームを予防のためだけではなく、使用するのがあたり前になれば感染を自然な行動で防ぐことになると思います。 生きていることの大切さを知って感染を知ってからの自分は、家族やパートナーや友達の愛を知りました。こんな僕でも生きて欲しいしいと思ってくれる人たちがいたことにも気付かず、感染を知るまで生きていたのかと反省しています。感染者の仲間が亡くなって行く中で、最後まで自分たちに弱音を見せず生きている姿や病気だけど心は健康だと言って自分らしくいきる姿をみるたびに自分が考えさせられたような気がします。最後に皆に考えて欲しいのは、今あたり前だと思えている、生きていることの大切さや身近にいる人たちのことを考えてください。そして、自分の問題としてエイズを考えることが感染を防ぐ第一歩だと思ってください。また、検査を受ける勇気を持つことのできない気持ちもわかりますが、自分の体はあなた一人のものでは無いことに気付いてください。今回で感染者としてお伝えしたいことを終えますが、僕個人の考えを聞いてくださって、ありがとうございました。HIV陽性者の方で病院に行けないでいる人や悩んでいる人はぷれいす東京まで電話で連絡ください。多くの人が考えるきっかけになればと願っています。
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