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Hの強化書 〜安心できると、もっと感じる。


僕たちのセックスにまつわる様々な悩みや葛藤。なかでも「セイファーセックスをしたいのに、できない」という相談が、ぷれいす東京 Gay Friends for AIDSの電話相談でも目立ってきています。そこで、ぷれいす東京 Gay Friends for AIDSがこれまでに行ってきた、厚生省HIV疫学研究班での結果やワークショップシリーズ「The Meeting Place」の経験をもとに、こんなリーフレットを作ってみました。僕たちのセックスライフが、もっと充実するために―。

伸哉の場合 168cm×74cm 21歳



「恋する男の逡巡」

彼とはじめて会ったのはね、もう1ヶ月くらい前かな。久しぶりに2丁目に飲みに行ったらさ、隣に座ってたのね。結構話も合ったし、もちろんこっちは超イケてたからさ、電話番号渡したりして。それで週末とかに電話くれて、一緒に映画とかも行ったしね。こないだの日曜は、ついに家に来ないかとも誘われて…。ん〜、たぶんこれでHしたら、つきあおうかってことになるんだろうな。

でもさ、彼が前に電話で「Hは責めるのが好き」とかって言ってたんだけど、いざってときにコンドームのことどうきりだそうかと考えちゃって。だからこないだも家には行かなかったんだ。彼のことは好きだけど、やっぱり自分の体は自分のものだからね。あ〜あ、長かったシングル生活も早く終了に…したいんだけどね。

「コミュニケーションで恋もHも安心!」

誰かと出会って、セックスをして、つきあうというのは、僕たちゲイのつきあいの始まり方の一つのパターンかもしれません。もちろんつきあいだしてからセックスをするにしても同じなのですが、自分はセイファーセックスがしたいという意志を、「どのタイミングで」「どういうふうに」伝えるのか、これが結構難しかったりするのです。

99年の「The Meeting Place」第1回のテーマが、「出会い」と「セイファーセックス」でした。「友達を作るならどんな方法で出会うのが良いか?」「恋人は?」「セックスが目的なら?」など、参加者全員でざっくばらんに話しました。

そのなかで、「ゲイバーやサークルは、会話によるコミュニケーションをとりやすい」との意見が出されました。

セイファーセックスをするためにも、会話によるコミュニケーションはとても有効な手段です。たとえばこの伸哉さんのような場合、ゲイバーで出会ったときやその後の電話での会話の中で、セックスに関する話題もしているようです。そのなかでさりげなく「コンドームとかは使ってる?」と聞いたり、「自分はいつもコンドームを使っている」などと言ってみてはどうでしょう?いざベッドでよりも、普段の会話で伝えたほうが、安心してセックスできるのでは。

幸浩の場合 174cm×65kg 25歳



「ハッテン場の後悔」

今の彼氏? 3月頃かなあ、インターネットで知り合ったんだ。家が遠いから、1ヶ月に2回くらいしか会えないんだよね。別に不満はないんだけど、やっぱりセックスはね、したくなるよ。たぶんあいつもハッテン場とか行ってるんじゃないかな、俺と同じで。

いや、別にそれはいいんだ。問題は別にあるんだな。先週末にさ、久しぶりにハッテン場行ったんだ。人気だって噂のところにね、初めて。聞いてたほどにはレベル高くなかったけど、いたんだよね、ばっちり好みのタイプが。しかも向こうから手出してきてくれたりして。

個室に入ったら、隣でやってることとか丸見えだったりして、二人とも興奮しちゃってさ。で、やつが俺のケツを指で責めてきたんだ。いや、アナルセックスはいいんだけど、やっぱゴムなしってのはなあ。だけど隣のボックスのやつらも使ってないみたいだし、「コンドーム」とかって口に出すのもなんだしとか思って。結局そこで俺ボックスから出てきちゃったんだ。

あ〜あ、あんなにタイプの男とやるチャンスなんてめったにないのにな。

「狙った男を逃さない秘訣とは?」

僕たちのセックスを語る上で、やっぱりハッテン場は欠かせないものでしょう。別に「行ってはいけない」とか「行かなければいけない」とかではなく、出会った相手とその場でセックスができるというのは、やはり独特です。しかし人によって、または場所によっては、ハッテン場はセイファーセックスのしにくい状況でもあるようです。

「The Meeting Place」でも、「ハッテン場」というテーマは2回とりあげています。そのなかで、「アナルセックスでコンドームをつけないまま挿入され、不安になった」というストーリーを、不安を残さないように変えるというワークショップを行いました。この幸浩さんの例の ように、「コンドームなしのアナルセックス自体をやめる」という方法もありますが、「常にコンドームとゼリーを携帯する」「相手のペニスをフェラチオするときに、コンドームをかぶせてしまう」などの方法も提案されました。

またぷれいす東京 Gay Friends for AIDSが99年度に行った研究によれば、「ハッテン場でアナルセックスするときに、相手はコンドームを使いたいと言い出したら、その人に対する印象はどう変わりますか?」という質問に、「良くなる」と答えた人が約50%、「変わらない」と答えた人が約45%にものぼります。幸浩さんも思い切って「コンドームを使いたい」と切り出してみれば、「めったにないチャンス」を、ものにできたのかもしれません。

啓介の場合 177cm×61cm 28歳




「恋人達の苦悩」

実は今日が30歳の誕生日なんだ、相棒の。もう5回目かな、祝ってあげるの。最初の頃は会うたびにって感じだったセックスも、2年くらいしてからは月1ペースになって。でも二人とも仕事とか忙しいし、他の人とのセックスなんて全然必要なかったんだ。

でもそう思ってたのは僕だけだったみたい。こないだ相棒のスーツのポケットから、ハッテン場のメンバーズカード見つけちゃった。「初めて行った」って言ってたけど、それは嘘だろうな。で、大喧嘩はしたけど仲直りして、彼も検査とか受けて全部陰性だったって証明してくれた。

でもね、僕としてはコンドーム使ってほしいんだ。だけどそう言ったら「お前は俺のこと信用してない。俺はもうハッテン場には言ってない」とかって逆ギレされちゃった。あれからなんとなく避けてた相棒とのセックスも、したくないわけじゃないんだけど…。今さら相棒とのコンドーム使ったセックスってのも、無理な話なのかなあ。

「ちょっとの工夫でもっと良好な関係」

この啓介さんの例でポイントとなるのは、「つきあっている人とセイファーセックスを始める」という点でしょう。今まで使っていなかったのに、さあコンドームを使おうと言っても、「俺のこと疑っているのか?」などと信頼感を損ねるのではと不安になったりなりがちですよね。

しかし98年度の研究では、ハッテン場に行ったことがあって、現在恋人のいる人の4割弱が、現在でもハッテン場に「よく行く」「ときどき行く」と答えています。彼のことを信じたい気持ちは当然なのですが、数字は現実的です。

また99年度の研究には、「恋人やつきあっている人とのアナルセックスのときに、コンドームを使いたいと言われたときの、相手の印象の変化」という質問もありました。結果は「良くなる」が約25%、「変わらない」が約60%、「悪くなる」が10%弱でした。ハッテン場での同じ質問の結果より「良くなる」が少ないものの、9割くらいの人は「良くなる」「変わらない」と答えています。

「The Meeting Place」で「パートナー間の予防」であつかった際にも出された意見ですが、信頼するパートナーだからこそ、時間をかけてじっくりと話し合ってみることが一番の近道かもしれません。

伸哉の場合 181cm×80cm 33歳



「タチ兄貴の憂鬱」

彼氏なんてずいぶんいないぜ。別にほしいと思わないしな。ハッテン場があれば満足するし。ハッテン場は少なくとも週に2回は行ってるよ。公園とか映画館も昔はよく行ったけど、最近は週末はサウナ、平日はヤリ部屋ってパターンになってきつつあるな。

俺は挿入する方専門だからさ、コンドームなんてほとんど使ったことないんだ。だって入れる方のリスクは低いとかって昔なんかで読んだことあるしな。

でも先月はついにA型肝炎で入院しちゃってさ。やっぱ相手のケツとか舐めたりするのって、やばいのかな? ハッテン場によく行く友達とかでも、最近A肝にかかったやつとか多くてさ。

あとさ、友達でやっぱりハッテン場大好きな野郎がいるんだけど、そいつがHIVに感染したらしいとかって噂もあって。そいつもタチだったはずなんだけど…。実際リスクってどうなんだろう? そんなこんなで、今はちょっとハッテンは控えようかなと思ってるところ。

「予防あってのハッテン野郎!」

「アナルセックスで挿入する側は安全」という「タチ神話」みたいなものは、根強く残っているようですね。しかしそれはまったくの誤りです。

少なくともA型肝炎やアメーバ赤痢などの一部のSTD(性感染症:セックスで感染する病気)に関しては、タチ・ウケはほとんど関係ありません。これらのSTDのウィルスや細菌は、アナルセックス以外の行為でも感染する場合が多々あります。詳しいことは病院や保健所でもらえるパンフレットなどを読んでください。

HIVに関しては、フェラチオ、アナルを舐めるといった行為で感染する可能性はゼロではありませんが、非常に低いものだと言われています。

しかしペニスは比較的弱い粘膜です。コンドームなしてアナルセックスをした際には、相手の血液が自分のペニスの傷につくことなどによって、挿入した側にも感染の可能性はあるのです。

99年の第4回「The Meeting Place」は、感染症を専門とする医師を講師にお招きして、STDに関する勉強会という形式をとりました。その先生も「正しい知識を身につけることと検査を受けるとがSTDを予防する第一歩」と言っていました。雅和さんも、早く正しい知識を身につけ、また楽しいハッテンライフを送れるといいですね。


イラスト/(c)タカサキケイイチ
構成/篠原欣介
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